前島歯科ブログ BLOG

インフォームドチョイスの先

森下駅徒歩二分、墨田区菊川の前島歯科医院院長の前島昌世です。

最近、医療現場の行動経済学 大竹文雄・平井啓編著 という本を読みました。
伝統的な経済学では人は合理的に判断するものとしますが、実際はそうではなく非合理的な判断を多くしますので、
そこを明らかにしようとする学問が行動経済学です。実際のビジネスではそういった人の非合理的な判断はよく利用されています。またその人間心理のくせからおこる医療者と患者のすれ違いに焦点をあて、逆にそれを理解することですれ違いを少なくできるのではないかという観点で、エビデンスに基づいて述べている本でした。私自身行動経済学には興味を持っていたので、非常に興味深い内容でした。
その中で医師と患者の治療の意思決定の変遷についての記述がありました。当院でもうたっているインフォームドチョイスも関連していますのでご紹介します。
昔 医療の専門家である医師は知識のない患者のためによりよい選択をしているので、患者はそれに従うべきという考え
インフォームドコンセント きちんとした説明を丁寧に行い、同意を得るようにする
インフォームドチョイス 治療法をきちんと説明をして、患者自身が治療法を選択する(患者は合理的な判断をするという前提)
このように変遷してきましたが、医療の知識のない患者さんが当事者であるというバイアスがある中で、合理的に治療法を選択するのには無理がある(特にがんや終末期など重大な判断をする際には)と考えられるようになってきた
そこで最近になり、医療者と患者の意思決定は、ともに行うべきものとして、共有意思決定あるいは協働的意思決定という概念が導入されてきた。共有意思決定の概念は知識などの乏しい患者やその家族とともに、専門家として、たとえて言うならソムリエのように意思決定支援をしていこうという考え方である

ざっくりとまとめるとこのような感じですが、歯科においては命がかかわるなど大きな判断ではないことが多いので、比較的合理的に判断されることが多いのではないかと思います。ただ大事なのはメリットデメリットを説明して判断していただく際に、自分が患者さんの立場であればどういう選択をするのかということを念頭においてお話をすることだと思います。以前より自分がうけたいと思えるような治療を提供していきたいと思っていましたので、それをふまえて患者さんに寄り添ってインフォームドチョイスをしていくことで、共有意思決定ができていくのかなと思っています。
たとえば歯を歯科医学的には抜歯適応の歯でも、患者さんが残したいと思っているときなど、日々の臨床で迷うことは多々あります。そんな時にも協働的意思決定できるよう患者さんに寄り添っていけるようにがんばっていきたいと思います。

 

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